大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㊽ 下駄箱の「靴」は、語る

ある雑誌に足育について書くことになり、はて、話の糸口として何を取っ掛かりにしようか…。
思いついたのが、下駄箱でした。
毎日、履いている靴は、足や靴のフィッティングの状態を映す鏡。それに気づいてもらえると、自ずと靴、そして足への関心が向く。そう考えたのです。
となると、写真が必要。かつてわが子がお世話になった保育園にお願いし、いざ、撮影となったのでした。

●ソールの踵側も反り上がり、まるで「ゆりかご」みたい
あった、あった!保育室の屋外側が板張りの低い縁側のようになっており、縁側で靴を脱ぐ。そして保育室の縁側側の壁に棚が取り付けられており、その棚が、下駄箱。小さな靴が並んでいます。
全部が、いわゆるスニーカー。甲の素材は人工皮革系。子ども靴のアッパー素材は、革を推奨したいところですが、革製は一足もありません。これが、日本の“普通”だから仕方ありません。
あれ⁉ 靴の状態をチェックするつもりはありませんでしたが、気づいてしまいました。
爪先が上がっているのは、躓くことを防ぐため。歩く時、足は煽るように運動していますが、煽り運動ができていない子どもは、年齢が小さいほど、躓き易い。爪先上がりは、靴に不可欠ですが、子ども靴は、特に必要です。
目に留まってしまった靴は、爪先だけでなく、踵も反り上がり、爪先も、より上がっている。ソールが、まるでゆりかごの脚のように反っていたのです。
こんな靴を履いたら、まさしく足をゆりかごに入れたのと同じ。じっと立っていようとしても、前に、後ろにゆらゆら。歩く時も、足が地面に着いた瞬間にゆらっ。こんな状態を想像してしまったのです。
なぜ、こんなふうになってしまったのか。靴が足の煽り運動を妨げないように、指の付け根辺りが曲がる、屈曲性が靴には求められます。それを考慮したのでしょう。その靴のソールの接地面には、一定間隔で溝が施してありました。それが、かえってマイナスに作用してしまったのかもしれません。

●踵が浮いてる…、これでは姿勢が前傾にならないか…
この他にも、内側に膨らんでいる靴。この靴を履いている子は、足をまだ真っ直ぐに保てず、内側に倒れ込むようになっているのではないでしょうか。
また、ソールの踵部分が、一方は外側が減り、もう一方は内側が減っている。そんな靴もありました。
気になったことが、もう一つ、ありました。前傾というか、踵が浮き、前のめりのような格好で、下駄箱の収まっている靴が、2足、3足とあったことです。この靴を履くと、歩く姿勢も前傾になってしまうのではないか。それとも前傾で歩いているから、脱いでも、前傾になってしまうのか。
私は、靴や足について偉そうに書いていますが、詰まるところは、一介の取材者。靴の研究家でも、設計者でもありません。それでも気づけることがあります。
まさに下駄箱、いえ、下駄箱の靴は語る、です。
家庭にも下駄箱はありますし、そもそもいつも履いている靴は、玄関に脱がれています。その靴に注意を払ってみると、お子さんの足や歩き方が見えてくるのではないでしょうか。

撮影協力:埼玉県熊谷市・ほしのみや保育園

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。

靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。