大谷知子

子供の足と靴のこと

連載56 幼児の靴の脱ぎ方7タイプ

思うところがあり、保育園での靴の脱ぎ履きについて調べようとインターネット検索をしていたら、目を引く研究論文に出くわしました。
タイトルは、「保育所テラスにおける子どもの靴を脱ぐ操作と発達的検討」(「日本家政学会誌2019」掲載/明和学園短期大学・甲賀崇史)。研究の目的は、「子どもが靴を脱ぐ行為に着目して、子どもが基本的な生活習慣を繰り返す中でいかなる経験を積んでいるかを検討する」とあった。
調査した保育所は、「0〜5歳児(〈筆者注〉小学校就学前)まで各1室の保育室を有し、平屋建てで保育室と園庭との間をつなぐようにテラスが配置され、テラスの地面との段差は27センチ」。
調査期間は、「2017年10月3日〜2018年2月26日」。
さて、子ども達はどんなふうに靴を脱いでいたでしょうか。

●体の成長に従って靴の脱ぎ方が変化する
脱ぎ方は、七つに分類され報告されています。
【タイプ1】保育者の援助で靴を脱ぐ
事例〈20ヵ月(1歳8ヵ月)児〉保育者に抱き上げられ膝の上にのせてもらい、子どもは保育者にもたれかかり、まず右足の靴を脱がせてもらう。保育者が反対側の足に手を伸ばすと、子どもは視線を移すが、脱がせてもらっている時は、視線は足元にはない。
【タイプ2】テラスに座って靴を脱ぐ
事例〈25ヵ月(2歳1ヵ月)児〉園庭に向かってテラスに座らせてもらい、子ども自身が両手で右側の足をテラスの上につかみ上げ、靴の面ファスナーを剥がして脱ぎ、脱いだ靴を自分の右側に置く。左側は、右手をテラスの床に着き、左手で面ファスナーを剥がし、踵部分に指を突っ込んで足を抜いて脱ぐ。
【タイプ3】爪先で踵部分を押さえ擦り上げて脱ぐ
事例〈38ヵ月(3歳2ヵ月)児〉テラスの縁にお尻をちょこっと掛け、右足の爪先で左側の靴の踵を押さえ、足を抜く。反対も同様にして脱ぐ。
【タイプ4】テラス側面で踵部分を押さえ擦り上げて靴を脱ぐ
事例〈63ヵ月(5歳3ヵ月)児〉テラスに深く腰掛け、テラス側面に靴の踵を密着させて靴を固定。その状態で足を擦り上げるように動かし、足の踵を抜き、靴が爪先に引っ掛かった状態で片足ずつ足を上げ、靴を抜き取る。
【タイプ5】テラスの床に両手をついて靴を脱ぐ
事例〈65ヵ月(5歳5ヵ月)児〉保育室の方を向いてテラスの前に立ち、両手をテラスの床について四つん這いのような格好になり、その状態で右足の踵を左足の爪先で押さえ、足を抜き、次に靴が脱げた右足の爪先で左側の踵を押さえて足を抜く。
【タイプ6】柱に手をついて靴を脱ぐ
事例〈72ヵ月(6歳)児〉保育室の方を向いて立ち、テラスの柱に左手をつけて、右足を上げて右手で靴の踵をつかみ、足を抜く。靴が脱げた右足はテラスの上に置き、右足で片足立ちした状態で、左足を上げて左手で靴の踵をつかみ、足を抜く。
【タイプ7】手で体を支えることなく靴を脱ぐ
事例〈保育者〉保育室の方を向いてテラスの前に立ち、右足の踵部分で左足の踵部分を押さえつけ、左足の踵を靴から抜く。左右の足を組み替え、今度は左足の踵で右の踵部分を押さえ、右足の踵を靴から抜き、次に右足、左足の順で爪先を靴から抜き、テラスに上がる。
●【タイプ7】が完成形……
【タイプ6】は、保育者にも見られ、【タイプ7】は、事例として保育者が挙げられていることが示すように、特に保育者に多く見られたとの記述がありました。
月齢ごとの脱ぎ方の変化を見ると、立位姿勢が完全に取れるようになるに従って、まず座って脱ぐことをしなくなり、次に手を使わず、立ったままの姿勢で足を使って脱ぐようになる。そして、保育者=大人に多く【タイプ7】が見られることからすると、【タイプ7】が靴の脱ぎ方の完成形とも言えそうです。
でも、多少なりとも靴についての見識をお持ちの方なら、“あら、まぁ〜!?”と思われたのではないでしょうか。
次回は、改めて靴の正しい脱ぎ方、履き方について書いてみようと思います。

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。