大谷知子

子供の足と靴のこと

連載80 男の靴下・子どもの靴下

それは、違う!ずっと前から言いたかった!
それを書きます。
好ましく思っている男性俳優が、液晶画面の中に。司会者と一時のトークの後、促されて座った。パンツの裾から現れたのは、生の足。靴下を履いていない。
お前もか!です。
素足で靴を履いている有名人、テレビの中で結構、見ますよね。そして彼らは、おしゃれだと判定されます。
だから靴下を履かずに靴を履くのでしょうが、“素足で靴”を広めたのは、イタリア通としても知られる有名タレントのようです。
私も、“素足で靴”のファッションセンスに感服したことがあります。
30年余り前、イタリアの靴メーカーによる記者会見。脚を組んだ、伊達男っぽい婦人靴メーカーの社長のパンツから生足が現れた時です。
季節は、夏。スーツではありませんでしたが、ジャケットは着ており、パンツ共に麻風の素材。靴はと言うと、モカ仕立てのドレスっぽいスリッポンでした。
このように“素足で靴”には、セオリーがあります。季節は夏、スタイルはカジュアル感覚であること、そして靴は、スリッポン。真冬にノー・ソックス、さらにきちんとしたスーツの裾から素肌がのぞくなど、私に言わせると、愚の骨頂です。
おしゃれな男は、靴下選びに意を尽くします。それを実践しているのが、イタリアの男性。フィレンツェで行われるメンズファッションの展示会に行くと、その好例が闊歩しています。
例えば濃紺のスーツの裾から覗く靴下は、エンジと濃いブルーの縦ストライプ。ジーンズには、単色の色物、ストライプ、水玉、あるいはジャカードの柄物など、自由自在にコーディネート。どれを選ぶかは、シャツやセーターの色や柄で決めているようです。
男のおしゃれは、靴下選びにあり!
私は、こう言いたいのです。

●子どもの靴下は、足を保護し、快適に歩く道具です。
では、子どもにとっては、どうか。
歩き始める前、ねんね生活の赤ちゃんは、寒い日の外出以外は、靴下を履かせる必要はないと思います。なぜなら、赤ちゃんは、手足で体温調節をしているからです。
靴を履くようになったら、靴下は、履かせるべきです。
理由は、靴との摩擦を軽減し、まだ柔らかい足を守るためです。
子どもにとって、靴下は、おしゃれではありません。足を守り、快適に歩くための道具です。
そのためには、次のようなことに気をつけなければなりません。
当然ですが、まずサイズが、合っていること。メーカーによって違いがあるようですが、靴下のサイズ表記は、「10〜12」「13〜15」など、2センチ刻みになっています。従ってピッタリのサイズという訳にはいきませんが、近いサイズを選ぶ。どちらにするか、迷った時は、大きい方を選ぶ方がベターです。なぜなら洗濯すると、編み地が詰まり、縮むからです。
次に素材です。綿か、ウールが適切。なぜなら、吸湿性が良いからです。子どもは、新陳代謝が良いので、足も大人より汗っかきです。そのため、より吸湿性が求められるからです。
また、靴下を履かせるべきという理由も、汗っかきが関係しています。汗で足が湿っていると、足の滑りが悪くなり、皮膚との摩擦が高まり、靴ずれなど皮膚を傷つける原因になります。靴下で吸湿するとともに保護する必要があるのです。
混紡、つまりウール、綿とポリエステルなどの化学繊維が混じっている場合は、どうするか。海外ブランドの子ども靴選びの手引きには、「最低66%以上が天然素材であること」とありました。こんなに厳密に選ぶのは難しいですが、目安にはなりそうです。
それとストレッチの効いた素材もありそうです。脱げにくいという点ではメリットはありそうですが、足を締め付けます。子どもの足は、骨の結び付きが弱いことを考慮すると、適切ではなさそうです。
最後にもう一つ、滑り止め付き。売り場に並んでいる靴下のほとんどに付いていると思いますが、これは、フローリングの床は滑りやすいため、室内での歩行を考えてのことと思われます。但し、滑り止め機能が強すぎると突っかかり、かえって危険です。また、靴の中で足は運動しています。この運動を妨げないという点でも、滑り止め機能の程度は、考慮すべきと思われます。
以上のようなことに気をつけた上で、お子さんの靴下選びを楽しんでください。

画像

 

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴事典」(シューフィル刊)がある。