大谷知子

子供の足と靴のこと

連載58 そうちゃんのくつ 3

そうちゃんの靴、4足目をつくりました。
ファーストシューズは、12.0㎝、次が12.5、13.0、そして今回は、13.5㎝。正確に言うと、そろそろ13.5㎝になる頃と、依頼している知り合いがつくってくれました。それもちょうど誕生日を迎えた私へのプレゼントとして。気遣いの二乗、嬉しい限りです。
タイミングよく、そうちゃんがわが家に来ました。履かせてみると、大きい様子。足長は、それほどでもないのですが、甲周りが大きそうなのです。それは、踵のホールドを改善してもらった時から感じていたことでもありました。
実は、息子も、同じ知り合いがつくった靴を小学校に入学するまで履いていました。息子も特に足を測ってもらった訳ではなく、第一に1歳そこそこの子の足を測ること自体が困難。テーブルの横に立って真剣にお気に入りのビデオを観ているので、足囲を測ってみようと、そっと足裏にメジャーを差し入れたら、払いのけられてしまいました。
そんなことをしつつ思ったのが、息子は、足長を大きくしていけば、甲の高さを気にすることはなかったということ。
違うんだな…。
歩き始めの時期も、違いました。息子、それに娘も、1歳を少し過ぎた頃には歩いていたと記憶していますが、そうちゃんは、お誕生を過ぎてもなかなか歩き出しませんでした。
知り合いに「自分の子どもはお誕生には歩き始めていたけど、まだなの」と言うと、「個体差ですね。個性です」という答えが返ってきました。
個体差。その言葉が印象に残りました。

こんなフィッティングでした。

●子どもの足の成長を予測してくれるサイト
最近、この個体差ということを考える機会がありました。
某大手スポーツシューズメーカーが、子どもの足の成長を1ヵ月ごとに予測するサイトを開設したというニュースです。
そして早速、SNSに書き込みが見られました。評価は「良い話題」「おもしろい」という反面、「試してみたが出て来た標準足サイズは、実際とは違った」という声も、また「成長の個体差はどう判別するのか」という指摘もありました。
会員向けサービスですが、登録すれば会員になれるので、私も、そうちゃんの体重、身長を入力し試してみました。でも、出て来たサイズは、実際とはかなり違いました。そして、私も「個体差」を思ったのでした。
プレスリリースにはありませんでしたが、新聞記事には「店舗に設置した足形測定装置などで約18万足の足形をデータ化」、またこのデータは「過去20年以上蓄積してきた」ものとありました。成長を予測するものなので、例えば1歳から6歳までとか、一人の子どもを一定期間計測し続けたデータを解析したものであって欲しいと思いますが、18万足の内容は定かではありません。いずれにしろ標準化とは、平均をはじき出すということなので、個体差は反映させにくいということになるのではないでしょうか。
思い出したことがあります。息子は、なかなか言葉が出て来ませんでした。私はフルタイムで働いていたので、育児は、ほぼ100%母任せ。保健所の健診も、母が連れて行っていました。
2歳児健診の時、保健師さんに「言葉が遅いようなので医師に診てもらったらどうか」と言われたそうです。それに母は「この子は耳も聞こえているし、周りで言っていることも理解しています。それは、毎日、一緒に過ごしている私がいちばん分かっています」と答えたそう。私だったら、そんなことを言われたらアタフタしてしまったかもしれませんが、息子は3歳になり保育園に行くと、言葉がどんどん出てきました。母が至れり尽くせりで、先回りして何でもしてくれるので、話す必要がなかったのかもしれません。
靴は標準化しにくい。人の成長もしかりでしょう。標準化されたツールは便利なものだと思いますが、個体差=個性を加え、より実態に即したものにするのは、普段、一緒にいる人の目。
そうちゃんは、個性を反映させてもらった靴を履いて、“あれ”“ダダーっ”“ぶにゃぶにゃぶにゃ”と“そうちゃん語”を話しながら元気に走り回っています。

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。