大谷知子

子供の足と靴のこと

連載98 「リコスタに、注目のゼロドロップシューズが登場」

リコスタ社が、新ブランドを発売しました。
「クヌッフス(Qnuffs)」です。
「かわいい」という意味のドイツ語「knuffig」をもじった造語だそうですが、語感もカワイイです。

どんな靴かというと、次の特徴を備えています。

①しなやかでフレキシブル
②完璧なフィット感
③ゼロドロップ
④つま先部分が広く、指の動きを妨げない
⑤さまざまな地面に対応
⑥素足で安全に歩ける
⑦長さをカットして調整できる面ファスナーのストラップ
⑧名前が記入できる仕様
⑨ビーガン対応モデルも

この中で「クヌッフス」を決定づけるのは、「②ゼロドロップ」です。

「ドロップ」とは、ヒール部とつま先部の高低差のことです。それが、「ゼロ」。靴は通常、つま先部よりヒール部の方が高く設計されているのですが、高低差がないのです。

それで思い出すのは、1970年代に世界的に流行したアースシューズです。アースは「earth」、つまり「大地」。大地を捕らえる靴といった意味ですが、特徴は「ネガティブヒール」。前述の靴設計のセオリーに反して、ヒール部の方がつま先より低いのが特徴。それによって背筋が伸び、正しい姿勢に導き、大地を捕らえる自然な歩きができるというものでした。

ゼロドロップの靴は、ドイツではトレンドのようになっているようです。アースシューズが注目を浴びた1970年代は、自然志向が高まった時代。再び、そんな志向が背景にあるのかと思ったりしてしまいます。

「クヌッフス」には、ヴィーガン仕様、つまり植物由来や再生素材を使ったモデルがありますが、自然志向の高まりも意識しているのかもしれません。

●足裏全体を使って歩けます

では、ゼロドロップには、どんな良さがあるのでしょうか。
足は、つま先とカカトの高低差はありません。つまり、裸足のように足裏全体を使って歩けるので、足裏の筋肉を刺激し鍛えられます。

また、つま先が広く、指の動きを妨げないように設計されているのは、指による蹴り出しを確実なものにし足裏全体を使った歩行をスムーズに進めます。
ソールは薄いものが装着されているが、さまざまな地面に対応するため。

さらにカットして長さが調整できるストラップは、もちろんフィット性への考慮だが、それだけではないのではないでしょうか。
靴には、足を支持、つまり支える機能が求められますが、それを実現するのは、カカト部分に入れるカウンターという部品、また適度な硬さのソールなどがあります。

「クヌッフス」は、カカト部にベルトを付けカウンターの機能を付けていますが、それだけでは心許ないので、より確実に足にフィットさせることで支持性を担保しようとしている。リコスタ社が、ストラップがカットできる仕様を採用するのは、初めてのことです。支持性も意識したからではないでしょうか。

また、名前が記入できる配慮は、ドイツでも校内では、靴を健康サンダルのようなものに履き替えるようですが、校内履きとしての着用も意識しているのかもしれません。上履きが一般的な日本でも、高機能な上履きとして履くことも十分に考えられるでしょう。

いいことずくめの「クヌッフス」ですが、ゼロドロップの靴は大人でも注目されており、早速と履いてみた人の中には、ふくらはぎなどに痛みが発生するといったことがあるようです。ゼロドロップの靴は、衝撃吸収性は弱いこと、歩き方が変わり、使う筋肉が分かることに原因があるようです。筋肉が柔らかい子どもには起こりにくい気がしますが、デメリットがあることも頭に入れておいた方がいいでしょう。

ゼロドロップの靴は、日本でも広がりを見せつつあるようです。売り場で見掛けたら、是非、手に取ってみてください。

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1997年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴事典」(シューフィル刊)がある。