連載53 そうちゃんのくつ
							そうちゃんが、1歳になりました。
							数ヵ月前からそわそわ。だって早いとお誕生日には歩いている子どももいます。靴を用意してあげなければなりません。
							子ども靴について、こんなふうに書いているのですから、使命とも言えます。
							どんな靴にするか、どこで調達しようか…。
							そうちゃんがこの世界にやって来た時から決めていました。
							買うのではなく、つくってあげよう!
							すぐに浮かんだのは、20年来の付き合いの職人、いや、職人では叱られる。靴設計家の顔。登山靴製作から始まり、足と靴との関係を独学で研究し、足を健全に育て保ち、歩行を正しく進める靴設計理論を打ち立て、足のトラブルを持つ人の靴をつくったり、裸足のマラソンランナーをサポートするなどしているのです。
							すぐに連絡しました。
							そうちゃんの靴、つくって!
							すぐに返事が来ました。
							はーい、つくります!
							そして、次のように添えられていました。
							娘の子どもに靴をつくった頃のこと、忘れていた楽しみを思い出しました。これは、実に楽しい「義務」と「責任」です。
							良い言葉だと思いました。こんな気持ちでつくられる靴が、悪い靴になろうはずがありません。
							1週間余りが過ぎた後、彼から小包が届きました。
							えっ、もうできちゃったの?!
							革は、指定したかったのに…。
							サンプルでした。「まずサンプルをつくる。その承認の後に本番をつくる」。そういう手はずになっていたんだった。
							マジックテープのベルトが二つ付いた、外羽根・スクエアトウのブーティ。ベビー、それもファーストシューズですから、こういうスタイルになるね。革は、ちょっと薄いかも。もっと良い革にしたい!
							革は、自分で調達して送ることにしました。
							
							●黄色いクリーム色の“ソックツ”だ!
							誕生日の1ヵ月近く前に、そうちゃんが初めて履く靴が届きました。
							革は、牛のソフトシュリンク。知り合いの革卸さんに譲っていただきました。ベビー靴には、肉が厚すぎる感じ。漉いて薄くすることもできましたが、大きさは100デシ余り。この革を使い続けてもらうことになるので、サイズが大きくなると、この厚みが必要にもなりそうです。革卸さんの提案もあって、この厚みのままで購入。必要に応じて漉いてもらうことにしました。
							色は、やや黄色味の強いクリーム色です。
							サイズは、12.5センチ。
							サンプルの敷き革は、踵が納まる位置にうっすらと窪みがつけてあり、取り外すことができました。取り出して、そうちゃんの足を当ててみて決めました。
							誕生日を待てません。すぐにそうちゃんに届け、履かせてもらいました。
							その時の写真が、下です。
							これ、何だろう??? 靴下とも違うみたいだぞ…。
							そんなふうに触って確かめようとしているように見えます。
							靴設計家氏に送りました。
							「革の“ソックツ”だね」という返事が来ました。
							うん、まさしく!
							ファーストシューズは、外を歩くことは、まずありません。つかまり立ち、伝い歩きから自力で立てるようになり、そして初めての一歩を踏み出す。
							そんな時期に履く靴です。家の中で履くことを想定し、底は、アッパーと同じ革です。
							だからソックスと靴の中間の“ソックツ”。
							次の靴は、ゴム底をつけてくれることになっています。
							そうちゃんは、つかまり立ちして手を離すような仕草を見せます。
							つかまらずに一人で立てるか、確かめているんだね。焦らなくていいんだよ。体の準備ができれば、一人で立って、一歩が出せるようになるんだから。
							でも、でも、待ち遠しい。
							早く13センチがつくれるようにな〜れ!
							




