大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㊿ ドイツの子ども検診手帳“黃色手帳”のこと その一

半年ほど前、母子健康手帳について書きました。
成長のポイントチェックでは「つかまり立ちができる」「一人で歩ける」など、足の機能に関することを上位に挙げているのだから、検診項目にも「足」を入れてください。厚生労働省さま、ご一考ください。
このような内容でしたが、こんな提案めいたことを書くには、不可能ではないという思いがありました。実際に乳幼児の足の検診を行っている事例を知っていたからです。
それは、ドイツです。子ども靴の独自規格「WMS」がある国。流石です。
それでドイツに住む知り合いに詳しく調べてもらいました。

●表紙が黃色だから、通称「黃色手帳」
日本は「母子健康手帳」、つまり母と子が一緒の手帳に収められていますが、ドイツは分かれています。
母の部分、つまり胎児を宿す妊産婦と胎児の健康管理を目的とするものは「MUTTERPASS=母親パス」と言います。
この発行は、法律で定められたのは1966年ですが、それ以前の1960年のテスト運用を経て、1961年に始まっています。
日本は、母子健康手帳の母体である妊産婦手帳制度が始まったのは、1942年。第二次世界大戦中のこと。戦時下の物資不足の中、食糧などの優先配給と定期的な健康診断を促すことが目的でした。その後は戦後の1947年、児童福祉法が施行され、その翌年、妊産婦手帳が母子手帳に衣替え。さらに1965年、母子健康法の施行によって、その翌年、母子健康手帳になりました。
日本の方が長い歴史を持っています。
では、子どもの方はというと、日本では前記の通り、戦後間もなく、母子手帳となった時に生まれたと言えます。
ドイツは、1970年代に法定健康保険のサービスの一環として生まれたようです。そして、子ども達はこの世に生を受けるのと一緒に手帳を受け取る。つまり、母親が分娩した病院で子どもの手帳が渡される。日本では、住んでいる市町村に妊娠届けを出すと、母子健康手帳が交付されるので、母親は出産時には手帳を持っています。
つまり日本も、ドイツも、子ども達は、出生時点で健康管理のための手帳を持つこになります。
で、ドイツでは、子どもの手帳を何と呼んでいるか。表紙には「KINDER-UNTERSUCHUNGSHEFT」とあります。これを訳すと「子ども検診手帳」となりますが、下の画像の通り、表紙は黄色です。そこで、「Gelbeheft(gelbe=黃色+heft=手帳)=黃色手帳」と通称されているそうです。

次回に続きます。

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴事典」(シューフィル刊)がある。