大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㊸ 「母子健康手帳」、懐かしい! ふむ、ふむ、ふむ。

前回のコラムを読んでいただいた方は、お察しのことと思います。私は、年齢的に完全な高齢者ですが、加えて「祖母」という意味でもおばあちゃんになりました。
元々、冷めたところのある性格のようで、溺愛などということには至りそうもなく、割と冷静に受け止めています。しかし、子ども靴について書く、あるいは論じるということについては、ハイハイをして、つかまり立ち、伝い歩き、そして靴を履いて独りで歩くようになる存在が身内にいるのは、この上ない環境です。
そんな訳で、前回に引き続き、そんな新しい環境からのお題を一つ。通称「母子手帳」、正式には「母子健康手帳」です。

●50年余り、大筋は変わっていない…
自分の出産から約30年ぶりに「母子手帳」を見ました。
「ねぇ、ちょっと見せて…」。
表紙をめくると、基本事項の後は、妊婦健診の記録、次に出産時の記録。その後は、月齢、年齢に応じた成長の記録・健康検査と続きます。
ふむ、ふむ、ふむ…。そのうちに気づいたことがあります。自分の子ども達の「母子手帳」と変わっていないのではないかということ。古い「母子手帳」を引き出しから引っ張りだしてみると、やっぱりほぼ変わっていません。
調べてみたら、妊娠した者は、妊娠の届け出を市町村にしなければならず、届け出をした者に「母子健康手帳」を交付すると、母子健康法に定められている。そして手帳の内容(様式)は、省令によって定められているとありました。
省令様式は、平成24(2012)年に改正されていますが、改正点は、赤ちゃんの健康チェックに関しては、聴覚検査の記載欄の追加、それに胆道閉鎖症など発見のための便色カードの提供の二つ。その他の項目の改正は細かな部分なので、大筋は、どうやら昭和41(1966)年の改正から変わっていないみたいです。
もう一つ、気づいたことがあります。
〈保護者の記録〉の項のトップに掲げられた事柄です・
・保護者の記録【9〜10ヵ月】
○はいはいをしたのはいつですか。
・保護者の記録【1歳の頃】
○つたい歩きをしたのはいつですか。
・保護者の記録【1歳6ヵ月の頃】
○ひとり歩きをしたのはいつですか。
・保護者の記録【2歳の頃】
○走ることができますか。
このように「はいはい」を立つための準備とすれば、みんな足がちゃんと成長してこその運動機能が、成長チェックのトップに挙げられているのです。
それは、そうです。二つの足で立ち、歩くことは、人間を人間たらしめている機能なのですから。

●格段に違う「足」と「歯」の扱い
でも、でも、でも、健康検査の足についての検査項目は、【3〜4ヵ月】に「股関節開排制限」の有無、つまり股関節脱臼があるか、ないかのチェックだけ。他は、足についての検査は、一切ありません。
それに引き換え、歯は格段の扱い。1歳児以降の健康検査ページに、歯が生えてくる順序をA〜Eで示し、「要治療のむし歯」「汚れ」「歯茎と粘膜の状態」「かみ合わせ」がチェック項目として示されています。
足と歯の、この違いは何なのでしょう。それもそのはずでした。歯科衛生に関する項目の記載は、省令様式に定められているのです。
保護者の記録のトップに、歩けるように成長しているか否かを掲げているのですから、歩くこと、つまりは足の成長の重要性を認識しているということですよね。だったら健康検査にも足についての項目、せめて内反足のチェック、また足の成長がいかなるものかを記載したページを設けるべきではないでしょうか。
そうしたら保護者の足、そして靴についての意識が高まり、足にトラブルを抱える子どもが減ります。
厚生労働省さま、ご一考くださいませ!

インターネットで見付けた「母子健康手帳」。
表紙は市町村の数だけバリエーションがありそうですが、中味は統一されています。

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。

靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。