大谷知子

子供の足と靴のこと

連載64 そうちゃんとリコスタ

リコスタの「ペピーノ」をいただきました。
ベビーレンジのブランドですね。サイズは、24です。
ヨーロッパで使われているサイズ表示の「サイズ1」は、「3分の2センチ」です。「1=0.66センチ」として計算すると、「15.84センチ」になります。
但し、日本のようにその靴を履いてちょうど良い大きさを表示する「足入れサイズ」ではなく、靴型の全長を表示する「靴型サイズ」です。
だから爪先余裕を考慮する必要があります。それを「1センチ」とすると、「15センチ弱」の足にフィットすることになります。
履くのはもちろん、そうちゃんです。
そうちゃんは今、「14センチ」を履いていますが、そろそろ「14.5センチ」にしなければならない頃です。
ちょっと大きいですが、試せないサイズではありません。
早速、履かせてみました。
オー、なるほど!

そうちゃんの靴の画像

●踵が浮かない、内側に倒れない…
そう頷いた訳は、まず踵の安定度でした。
日本のサイズで言うと、1サイズ近く大きいので、踵が浮いたりしてもおかしくないと思うのですが、そのような様子は見られませんでした。
また、内側への倒れ込みも認められませんでした。
後で革製の中敷を外してみたところ、裏側にトーマスヒールのような形状のパッドが張り付けられていました。トーマスヒールは、内側を長くしたヒール。外反足などで足が内側に倒れ込むのを防ぐために使われる整形靴の技法の一つです。倒れ込みが見られないのは、このパッドの効果でしょうか。しかし結構、薄いものであり、このパッドによって踵の位置が安定し、そのことが倒れ込み防止にもつながっているようにも思えました。
さらに中敷を外した内部をのぞき込むと、ストローベル製法になっていました。ストローベルは、柔らかい中底とアッパーの縁を縫い合わせた、いわゆる袋縫いのことです。袋になっているので、足をすっぽりと包み込み、かつ屈曲性が良いという特徴があります。
足の収まりが良さそうな印象を受けたのは、この製法のせいかもしれませんし、そもそも靴型のフォルムが違います。甲の内側が高く、外側が低く作られているように見えます。

●WMSは、サイズ規格ではありません
いいことばかり書き連ねて、おべんちゃら。決してそうではありません。
このような靴を可能にしている根底には、「WMS」があると思うのです。
「WMS」は、ドイツの子ども靴規格です。リコスタは、これに準拠した靴づくりを行うメーカーです。「W=Weit=広い」「M=Mittel=中間」「S=Schmal=狭い」を意味し、三つの幅を規定していることから、この名があります。
でも、だからと言って、単なるサイズ規格ではありません。古いバージョンですが、「テクニカルガイドライン」と題された資料を持っています。これを見ると、実に細かい。
ボールジョイントの位置、親指側、小指側それぞれの角度、トウの高さと爪先余裕、さらに足長を三つのレンジに分け、レンジごとに履き口の高さ、またヒールガース等々。
つまり、「WMS」は、靴型の規格なのです。
そしてガイドライン通りに靴型が作られているかどうかをチェックし、そのチェックに通らないと「WMS」のマークを付けることはできないのです。
自分の子どもが小さい頃は、ヨーロッパ製の子ども靴は手に入れにくい状況にありました。そうちゃんに履かせてみて、「WMS」に準拠した子ども靴の優秀性を、身をもって体験した思いです。
「WMS」については、このコラムの第6回で取り上げています。そちらもご覧ください。

WMSテクニカルガイドラインの画像WMSテクニカルガイドラインには様々な図が掲載され、細かく数値を規定しています。

                      

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。