大谷知子

子供の足と靴のこと

連載-103-ちいくん、石を拾う。

公開日:2026.9.7

 わが家、それにちいくんが暮らす息子家族の家の庭にも、雑草や雨などによる泥濘み防止のため、一部に砂利が敷き詰めてあります。
 ちいくんが、砂利を敷き詰めたところに足を踏み入れると、十中八九立ち止まり、座り込みます。そして、砂利、つまり小石を拾います。そして、その石を近くにある排水枡の蓋のすき間から枡に中に落とします。
 息子の家の排水枡は、マンホールのように丸い蓋がしてあり、蓋を外す取っ手の窪みがあります。ちいくんは、息子の庭では、その窪みに拾った石を入れます。

 拾っては入れ、拾っては入れ…、ちいくんは、飽きません。蓋の窪みが一杯になると、石を拾い出し、別の石を拾ってまた入れます。石をすき間から入れた方の枡は、排水溝を詰まらせはしないか心配になったりもします。
 そう言えば、お兄ちゃんのそうちゃんも、ちいくんの同じ年齢の頃、よく石を拾っていました。石拾いは、幼児に共通した行動なのかもしれません。
 Googleに「幼児 石を拾う」と入れてみました。結果は、やっぱりでした。
 公園に連れて行くと、必ず石拾いをする
 保育園に送っていく途中で石を拾い始め困る
 公園で拾った石を家に持って帰ってくる。その石、どうしたらいいのか 等々
 最近、Googleで検索すると、結果の冒頭にAIの回答が表示されますが、「幼児 石を拾う」の検索結果冒頭には「幼児が石を拾う行動は、指先の感覚を養い好奇心や探求心を育む大切な成長のステップです」とありました。
 「なぜ幼児は石を拾うのか」と題した研究論文も出て来ました。読んだところ、要約すると、次のようなことが書かれていました。
 皮膚感覚の基礎である触覚を通して神経系が育つ。1歳頃の幼児にとって石は握りやすい大きさであり、それを拾い、握り、さらに運んだり、投げたりすることで触覚が刺激され、それが体全体を育てる。
 ちいくんは今、1歳9カ月。そうちゃんの石拾いも、2歳になる前でした。「石を拾う」という行為は、1歳過ぎから始まり、歳を重ねると、その石を陣地のように並べたりと「遊び」に発展していくようです。

●靴もヒトがつくり出した道具です。

 でも、なぜ石なんだろう。論文には、前記のように「石は握りやすい」とありましたが、それだけなんだろうか。
 頭に浮かんだのは、人間が最初につくり出した道具は、石でつくられた石器。その記憶が、DNAに刻まれており、それが、石を拾わせるのではないか、ということでした。
 この真偽を確かめるのに、AIの力を借りました。
 最古の道具は、石器であることに間違いはありませんでした。ヒトが属するホモ族がつくった石器は、約260万年前の遺跡から発見されています。
 しかし、DNAに記憶されるのは、体のつくりなどであって、歴史は記憶されない。
 AIは、私の考えをこのように否定しましたが、進化心理学の見方に立つと、完全に的外れとも言えないという見解も示しました。
 進化心理学は、人間の心や行動を進化論に基づいて説明しようとする学問だそうです。
 例えば、人間は甘い物を好む傾向にあります。それは大昔、甘い物は高カロリーで命を助けるものであったにもかかわらず手に入りにくかった。その記憶が、甘い物を好むという嗜好の根底にあるからというような考え方です。
 私は、このように理解しました。
 この考えた方に立つと、石でつくった道具は生きていくのに大切な道具だった。その記憶が、石に興味を向けさせるということも言える訳です。
 我田引水ですが、誹りを恐れずさらに言うなら、靴もヒトがつくり出した道具です。石は屋内ではない外、広く言えば、自然の中にあり、自然の中で行動するのは、靴という道具が必要です。
 ちいくんが、石を拾いながら、靴を履いた足元も見て靴に興味を持ってくれるようになると、いいな。

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴事典」(シューフィル刊)がある。